添付5)用語説明:その1(初心者向け)

 日常生活では滅多に使わない、セールボートならではの用語を憶えましょう。クルー講習前半までに覚えると良いでしょう。

スロットルレバー 

  クルマでいうアクセル。このレバーを使って船の前進・後進やスピード調整を行う。とても重要な部品であるにもかかわらず、何故か足で蹴っ飛ばしやすい位置にある。ゲストはともかく、メンバーでこれを蹴っ飛ばしたらデコピンの刑。

ティラー (tiller) 

  舵棒。船の舵を操作する棒。普通船の最後尾にある。クルマでいうハンドル。とても重要な部品であるにもかかわらず、何故か人にぶつかりやすい位置にある。ゲストはともかく、メンバーでこれを蹴っ飛ばしたらデコピンの刑。

舵輪 (wheel) 

  クルマで言うハンドル。ティラーに比べて、少ない力で船を動かすことが出来る。30フィートを超える船だとティラー型よりホイール型が増えてくる。

ヒール (heel)

  傾斜あるいは傾く・傾かせること。セールボートはヒールして走る乗り物です。20度〜30度前後のヒールはごく普通です。ただし、30度のヒールを初心者がいきなり経験するとほとんど沈没寸前に感じることでしょう。実際は全く問題ないので、心配しないでください。

ヒールをつぶす

  ヒールは「してしまうもの」であって、「したほうがいいもの」ではありません。風上側のデッキに座って傾いた船を起こすことによって、船を安定させるテクニックを「ヒールをつぶす」といいます。5人がデッキの端に座ればそれなりの重量になります。スキッパーから「ヒールをつぶして」と言われたら、落ち着いて風上側デッキに移動して下さい。

オーバーヒール(over heel)

  過大なヒールのこと。ヒールさせすぎるとスピードが出なくなる。船のデザインにもよるけれど40度を超すヒールは普通オーバーヒール。そのまま倒れることはほとんど無いが、スピードが出なくなる。セールを小さくした方がいい。

本船(ほんせん)

大きい商船をこう呼ぶ。他に「漁船」「作業船」などもある。東京湾は、日本有数の(というか世界有数の)船舶混雑海域である。大小様々な船が頻繁に行き来している。

バウ(bow)

船首 船の前の部分。どこからどこまでと言う明確な区別は無い。バウハッチより前がバウ、なのであろう。レース艇などでは、バウに居続けてセールの揚げ降ろしを担当する「バウマン」というポジションがあるそうだ。

ミッドシップ(midship)

船の真ん中の部分。どこからどこまでと言う明確な区別は無い。ミジップとも。別の使い方として「現在の進路をそのまま進め」という時に「ミッドシップ」という操船号令を掛けることがある。

スターン(stern)

船尾 船の後ろの部分。どこからどこまでと言う明確な区別は無い。

ポート(port)

左舷、船の左側、取り舵。船が左に行くように舵を切ることもポートという。 船の左舷側を港に付ける習わしがあったのでこう呼ぶ。

スターボード(starboard) 

右舷、船の右側、面舵(おもかじ)。船が右に行くように舵を切ることもスターボードという。 starboardとは舵板(steering board)がなまった言葉。昔帆船の舵は船の中心ではなく少し右舷よりの位置に取り付けられていた。未整備の岸壁にあまり舵を近づけると舵そのものを壊す恐れがあったため、少しでも岸壁から離そうとしたのだ。

ビーム(beam) 

船の横幅の一番大きいところ。船幅ともいう。

スタンション(stanchion) 

「スタンチョン」と発音した方が英語には近い。支柱のこと。船のバウからスターンに向かってデッキ端に沿って立っているステンレスの柱。見た目ほど頑丈ではないので、力一杯押したりしないこと。

ライフライン(life line) 

スタンションを結ぶようにのびているひも。ライフライン(命綱)という名前の割にはあまり丈夫でないので、注意。全体重をかけると、スタンションもろとも海に落ちることになる。

フェンダー(fender)  

防舷物(ぼうげんぶつ)。堅いビニールの風船に空気が入ったもの。これを船につるして、着岸時などに岸壁が直接船体に当たらないようショックを吸収する。自動車のタイヤを保護するフェンダーの語源。

フェンドオフ(fend off)

船が外の物体にぶつからないようにするための行為・行動。「隣の船が近づいてきた、フェンドオフして」などと使う。

スチロバール(styrobar or orange fender) 

フェンダーの一種。中身が発泡スチロールで出来ている。大型のモノが多い。漁港などに止めるときには重宝する。実はスチロバールは商品名。英語ではオレンジフェンダーと呼んだ方が通りが良いようだ。

マスト(mast) 

船の中央前部に立つ柱。ここに帆を張る。フォアステー、バックステー、シュラウド(左右で2本)の4本のワイヤーでマストは固定されている。

フォアステー(fore stay) 

マストを支えるワイヤーの一つ。マストの上端からバウに向かってのびている。

バックステー(back stay) 

マストを支えるワイヤーの一つ。マストの上端からスターンに向かってのびている。

シュラウド(shroud)  

横静索(よこせいさく)。マストを支えるワイヤーの一つ。マストの上部分から両サイドに向かってのびている。左右で2本ある。フォアステー、バックステーとくればサイドステーといいたくなるが、セールボート用語でそうは言わない。

ブーム(boom)

 日本語では帆桁(ほげた)という。マストの下部に付いていてスターンの方にのびている長い棒。マストとブームにメインセールを張る。風の具合でこのブームはよく左右に振れて大暴れしたりする。このブームに頭をぶつけると、かなりひどい目に遭うことになるので注意が必要。この現象には「ブームパンチ」という名前が付けられているくらいメジャーな事故。

セール(sail)

 帆のこと。セールは付ける場所によって大きく分けて2種類あって、メインセールとフォアセールがある。マストに付いているのがメインセール。フォアステーに付いているのがフォアセール。

メインセール(main sail)

マストに付いている帆。ブームともつながっている。セールボートのメインの動力源。セールボート英語を耳から覚えた人は「メンスル」と発音するが、全く同じモノ。

フォアセール(fore sail)

フォアステーに張られる帆。ジブと呼ばれることが多いのは、帆船時代の名残。帆船ではこの位置の帆をジブと呼んでいた。一番大きいフォアセールを1番、次が2番、次が3番と番数が大きくなるに従って帆の面積が小さくなっていく。風の強弱に合わせて適切な番数のフォアセールに変えていくことによって、船の安定や速度を保つ。

ジェノア(genova)

一番大きいフォアセールの名前。微風時に大活躍する。微風が多いイタリアのジェノバで生まれたセール。ただし、風が吹き上がってきたのにいつまでもジェノアを付けていると、オーバーヒールする。 

スピネーカー(spinaker) スピン

ジブとは揚げ方が全く異なる、追い風専用の一番大きいフォアセールの名前。揚げるのが難しく、安全に揚げるためには人手がいる。左右対称の形をしている。

ジェネカー

ジェノアとスピネーカーの中間のサイズ・機能があるものをジェネカーと呼ぶ。和製英語。

ハリヤード(halyard)

 (帆や旗を)揚げる為のロープ

メインハリヤード

  メインセールを揚げるためのロープ

ジブハリヤード

  ジブを揚げるためのロープ

シート(sheet) 

狭義では帆足索(ほあしづな)。帆の開きを加減するロープ。セールのクリュー近辺に結ばれたロープ。広義では操船に使う固定されていないロープのこと。

メインシート(main sheet) 

揚がったメインセールの開き具合をコントロールするためにクリュー近辺に結ばれたロープ

メインシートトリマー(main sheet trimer) 

メインセールのコントロールを担当する人。ウインチとウインチハンドルを駆使して、メインセールのコントロールをおこなう。

ジブシート(jib sheet)

揚がったジブの開き具合をコントロールするためにクリューに結ばれたロープ

ジブシートトリマー(jib sheet trimer)  

ジブのコントロールを担当する人。ウインチとウインチハンドルを駆使して、ジブのコントロールをおこなう。

ヘッド (head)

  船のトイレのことを伝統的にこういう。帆船時代のトイレは船の船首(head)にあった名残らしい。昔の帆船は追い風でしか走れなかったので、船首はいつでも風下になったので、トイレの設置場所としては一番良かったようだ。

ハル (hull)

  船の船体のこと。マストや帆などは含まない。「この船のハルは頑丈だよ」のように使う。BlueMoonのハルは、構造設計が手作業の時代の制作なので、余裕を見てかなり丈夫に作られている。最近の船よりも数倍強い。

バラスト (ballast) 

  ハルの下部に出っ張ってついている鉛の固まり。セールボートの場合これが全重量の30%以上を占めることが多い。このおかげでセールボートはたとえ180度ひっくり返っても、元に戻ることが出来る。あらゆる船舶の中でセールボートが一番安全といわれるゆえんである。

キール  (keel) 

  竜骨。FRP製のセールボートの場合はキールに該当する部材はないが、バラストをキールと呼ぶことがままある。

コクピット (cockpit) 

  舵を操作するくぼんだ部分。セールボートの操船はここで行うことになる。安全な部分なので、ゲストはここに座っているのが一番良い。ここから離れるときには船長の許可をもらうこと。季候の良いときにはここでランチを食べたりもする。

ポイントオブセール(point of sail)

セールボートが風に対してどのような向きで走っているかを表した言葉。BlueMoonでは以下の6種類を使う。

ビームリーチ(beam reach)

  風に対して真横で走っている状態。リーチングの一種。

ランニング(running)

  風を真後ろから受けて走っている状態。

ブロードリーチ(broad reach)

  ビームリーチとランニングの間の状態。

インアイアン(in iron)

  もろに風に向かってしまった状態。この状態ではセールボートは走ることが出来ない。ノーセールゾーンとも呼ぶ。

クローズリーチ(close reach)

  インアイアンとビームリーチの間の状態。リーチングの一種。

クローズホールド(close hauled)

  クローズリーチの中でも「これ以上風上に向かっちゃうとインアイアンになってしまう」ぎりぎりの状態のこと。帆走では多用する。日本語では「上りいっぱい」などといったりもする。

テルテール(telltail)

  セール両面に取り付けられた細いリボン。これが水平に流れていると、風が綺麗に流れていると判断できる。原則として、表面も裏 面も全てのテルテールが水平に流れるようにセールを調整する。やってみると分かるが、実際には至難の業。

メインハッチ(main hatch)

キャビンとコックピットをふさぐ大きなハッチ。BlueMoonでは2枚の板で構成されている。

フォクスル(forecastle)

船首内の部屋。

バース(berth)

船を停泊させる水域、船内のベッド、居室。

帆の各頂点の名前

 ピーク (peak)

  帆の一番高い頂点の名前。

クリュー (clew)

  帆の一番低い頂点で、マストやフォアステーに固定されていなくて動き回る部分の名前。

タック (tack)

  帆の一番低い頂点で、マストやフォアステーなどに固定されている部分の名前。

風が吹いてくる方向  

ポートタック

メインセールの左舷側(ポート側)から風を受けている状態。

スターボードタック

メインセールの右舷側(スターボード側)から風を受けている状態。

タッキング (tacking)

タックを左右入れ替える動作を続けざまに行うこと。ポートタックからスターボードタックに船の向きを変えること。あるいはスターボードタックからポートタックに船の向きを変えること。ただし、風上側から入れ替える場合にのみこの言葉を使う。英語ではこの動作を繰り返すことがあらかじめわかっているときに使う。一回しか行わないことがわかっているときには come about という。

ジャイブ (gybe)

タッキングと同様だが、追い風の時に風下側から風軸を越える場合にのみこの言葉を使う。

スタンディングリギン (standing rigging)

マストを支える支索(しさく)。通常ワイヤー製で、とても丈夫に出来ている。

ランニングリギン (running rigging)

セールをコントロールするための支索(しさく)・ライン。帆を揚げるための「ハリヤード」と帆の開きをコントロールする「シート」が主なランニングリギンである。

  ハリヤードは2種類。メインハリヤードとジブハリヤード。

  シートも2種類。メインシートとジブシート。 

リーフィング (reefing)

縮帆。セールボートではメインセールを少しだけ畳んで帆の面積を小さくすること。風が強くなってきたときにはリーフして船の傾きをコントロールする。リーフしていないときを「フルセール」と呼ぶ。

ワンポイントリーフ (one point reef)

ファーストリーフ/ワンポンともいう。第一段階リーフ。メインセールの面積がフルセールの時の70%程になる。

ツーポイントリーフ (two point reef)

セカンドリーフ/ツーポンともいう。第二段階リーフ。メインセールの面積がフルセールの時の50%程になる。